吉村正さんの人権を守る会編「守れ!人権」


「守れ!人権」 〜思想改造と闘った76日間〜
吉村正さんの人権を守る会編集
光言社発行(1988.1.15)

吉村正(よしむら・まさし)
1959年、山口県生まれ。
1980年、京大在学中に原理研究会に入会。1984年京大農学部卒と同時に京大原研責任者となる。同年8月27日「憂慮する会」(戸田実津男会長)により拉致され、札幌市に準備されていた収容所に76日間にわたって監禁、棄教を迫られた。手錠をかけられ鉄格子の部屋に監禁されるなど暴力的監禁であったが、精神的限界を超えながら自力で脱出した。途中、裁判(人身保護請求)がなされたが、統一教会に反対する左翼弁護士たちが約200名の連名で審理を引き伸ばすという異常な手段を講じた。


吉村氏の拉致監禁事件についての見解
林修三弁護士(元内閣法制局長官)

「拘束者側の“200人大弁護団”は異常」
28歳に達した成人を親が監禁する事は、民法の基本精神から言ってもおかしいことだ。違憲行為であることは間違いない。更に、鉄格子を部屋の窓に入れ、改宗のために特別な監禁施設を作っていたというが、こんなことは思想・信条を憲法で保障している日本であってはならないことだと思う。(中略)
吉村君の両親は山口県在住で、わざわざ山口から北海道に出てきて拘束したと聞くが、もしそうだとすれば戸田会長や『憂慮する会』側の教唆があったのではないかと感じられる。更に、戸田会長が経営する
同じ施設で何人もの統一教会員を監禁し改宗、脱会を強制しているとすれば、直接的には親がやっていると言っても、戸田会長には共犯が成立する可能性がある。
とにかく憲法の第13条に『すべての国民は、個人として尊厳される』と銘記されているように、20歳を越えた独立した個人だから、いかに親といえども、その個人の権利を奪うことはできない。
また、人身保護法に基づいて人身保護請求が行われてから、1ヶ月も審問が行われなかったと聞くが、そもそも人身保護の裁判は速やかにやるのが原則だ。その急を要する裁判を長い間ほうっておいたことは問題だ。
人身保護法の場合、本人が監禁されているかいないかの事実関係を調査するだけでよいと思う。1ヵ月、2ヵ月と裁判が長引いたことは訴訟指揮に少し問題があったのではないか。裁判は本人が自力で脱出し請求側が取り下げて終わったが、事情によっては弾劾裁判にもなる問題であろう。
本人の意思に反する私的監禁などそう簡単に認められるものではない。公権力による人身拘束は厳密に法律に基づいて行われるが、私的監禁に関して、監禁事実がはっきりしていれば拘束者側の事情など聞く必要はないはずだ。2回に審問を分けて審問期間を引き伸ばした理由が理解できない。
更に、
拘束者側に200人もの弁護士が付いたと聞くが、これも異常なことだ。しかも、共産党系の弁護士ばかりだという。もし仮に、これが共産党員が監禁されたとすれば『人権侵害』といって大々的にキャンペーンをやっていただろう。
上野忠義弁護士

「人権侵害を野放しにした裁判所の職務怠慢」
突然手錠をかけられ、飛行機で戸田の収容所へ拉致され、改宗するまで何カ月でも監禁される。弁護人はおろか外部の誰とも連絡を取ることは許されない。ここでは統一教会員には人権保障はない。全くのアウトローがまかり通る。
吉村正君は戸田の収容所に入れられ、人身保護法請求手続が札幌地裁で継続中に判決を待たず自力で脱出した。彼は仮釈放も認められず、裁判所は頼りにならないと判断したからである。吉村君の拘束は法的根拠がなく、違法なものであったから脱出しても誰もとがめることはできない。(中略)
それにしても不法監禁から76日目にしてやっと『自力脱出による自由の獲得』とは、いったい、裁判所はそれまで何をしていたのか。何故それだけの日数が必要だったのか。
人身保護の請求をしたのは昭和62年9月17日であった。
人身保護法第12条第4項によれば審問期日は人身保護の請求があった日から一週間以内に開かなければならなかった。ところが札幌地裁は(中略)10月13日にやっと準備調査期日を開いたにすぎない。しかも調査期日に何も調査をしなかった。そして第1回目の審問期日が開かれたのは10月28日であった。この時仮釈放が求められたが裁判所は仮釈放もしなかった。(中略)
同じような理由で手錠をかけられ精神病院に監禁されていた美馬秀夫君のための人身保護請求事件(東京高裁昭和55年人ナ第1号事件)の裁判官は立派であった。拘束者であった精神病院側は改宗業者、後藤富五郎(本件の戸田と同じ仕事をしていた人)を証人として尋問してほしいと言ったが裁判所はその必要なしと決定し、速やかに美馬秀夫君の釈放判決を下した。
人身保護手続では『身体の自由の拘束』があるかどうか、あるとすればその拘束は法律上正当な手続によるものかどうかを調べるだけで十分である。(中略)その点
札幌地裁の動きは変であった。拘束者側の大弁護団に影響されていたのかも知れない。人権侵害者に共産党系弁護士200人の大弁護団がついた。人権擁護を使命とする弁護士が人権侵害の弁護をしたわけである。
彼らは『戸田は拘束者ではない。拘束者は親である。親がそこまでやったのは原理研究会や統一教会が悪いからで拘束は正当だ』と主張し、問題の本質を親子問題にすりかえ、統一教会非難に終始した。しかし親子問題の解決だけなら200人の弁護士は必要ないのである。
(中略)マスコミの報道もおかしかった。マスコミは本件を『監禁か説得か』というタイトルで報道した。本当は『改宗のための監禁は是か非か』でなければならなかったのである。(中略)
本件で裁かれなければならないのは、拘束者らだけでなく、速やかに吉村正君を釈放しなかった裁判所や吉村正君の釈放に反対した拘束者らの弁護団200人の弁護士である。
入江通雅・青山学院大名誉教授
 (元NHK国際局ニュース解説担当)


「基本的人権の思想が定着していない日本」
この事件に限らず、統一教会に所属している人に対して、宗教迫害的なことを現実に行われているし、そういう組織的なグループもできている。今までの例で見ても精神病院に入れられるなど、非常に人権が侵害されているケースが多い。
今回の場合、この青年は逃亡防止の鉄格子などを使った監禁用の部屋に閉じ込められていたと聞いた。ということはそれを組織的に指導しているグループがあるということであるから、これは非常に問題だと思う。(中略)
統一教会の場合は共産党が非常に脅威を感じているから、その外部団体等で組織的に妨害したり改宗を迫ることによって、統一教会の発展を防ぐということ、更に統一教会のイメージダウンをはかるという、二つの効果を狙っているのだと思う。
エコノミストという、イギリスの雑誌があるが、その雑誌社が世界の人権についての本を出している。それによると、日本における人権の保障はあまり十分でないと評価されている。(中略)
基本的人権についての思想が不十分であるということは、日本の社会にとって非常にマイナスであると思う。